3分でわかるミュージカル『エリザベート』のあらすじと魅力

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ミュージカル『エリザベート(Elisabeth)』は、オーストリアのウィーン発祥のミュージカル。オーストリア皇后エリザベート(シシィ)と、彼女を愛する「死(トート)」を中心に描いた物語です。

脚本・作詞ミヒャエル・クンツェ、作曲シルヴェスター・リーヴァイ。

1992年にウィーンにて初演。

「死」という抽象概念を若くてイケメンのロックスターとして登場させるミュージカルは当時のヨーロッパで話題になるほど画期的なものでした。

その後日本では宝塚歌劇団が「死」トートを黄泉の帝王として主役にして上演。東宝版は宝塚版をもとにしてエリザベートを主役にして上演するなど、30年以上親しまれている定番ミュージカルです。

目次

3分でわかるあらすじ

プロローグでは、エリザベートを暗殺したルイジ・ルケーニが死者の世界で裁判にかけられています。

裁判官が皇后暗殺の動機を尋問。

暗殺者ルケーニは、「動機は愛、黒幕は『死』」と答えます。

証人として、エリザベートと同じ時代を生きたハプスブルク帝国の亡霊を呼び出し、

エリザベートと「死」の物語がはじまります。

美貌の皇妃

物語はエリーザベトが14歳の頃から始まります。

エリーザベトはバイエルン公国の公女として、自然に囲まれてのびのびと自由に暮らしていました。愛称はシシィ。

あるとき、サーカスの曲芸をしていてはしごから落下したシシィは、「死(der Tod)トート」と出会います。

シシィに一目ぼれした「死(トート)」。

彼女に心から愛してほしいと、死後の世界に連れていくのをやめます。そしてシシィの今後の人生の節目節目に関わってきます。

16歳のときシシィの人生は一変。

姉の見合いについていった彼女は、姉の見合い相手だったオーストリア皇帝フランツ・ヨーゼフ1世に一目ぼれされます。

そして結婚。オーストリア皇后となります。

当時のオーストリア、ハプスブルク帝国は複雑な政治的状況にありました。

民族主義の台頭が目覚ましく、帝国は終焉へと向かっていました。

それにもかかわらず伝統と格式に固執する宮廷。

エリーザベトは若く美しく、自由を愛する性格で知られていましたが、

宮廷の厳格な習慣や宮廷人々との摩擦に苦しむこととなります。

とくに、皇帝の母ゾフィーとはことあるごとに対立しました。

生まれた子供たちも取り上げられてしまいます。

夫も助けてくれず、シシィは孤独感を募らせます。

弱った彼女に「死」がささやきます。

ですが、ここでシシィは自我に目覚めます。

「私は私だけのもの」

自由を求め、幸せを見つけるために戦います。

自分の美貌が武器になると気づいたシシィは、皇帝に自分の要求を受け入れさせることに成功します。

滅びゆく帝国

シシィの要求によって、オーストリアはハンガリーに自治権を認めます。

オーストリア=ハンガリー二重帝国の誕生。

豪華な戴冠式が行われます。

シシィは自分の思うままになる状況に満足していました。

自由きままにウィーンから離れ、お気に入りのハンガリーに長く滞在するようになります。

その一方で、王宮に残された幼い息子ルドルフは母を恋しがっていました。

自由を手に入れたシシィに息子の叫びは届きません。

代わりに「死」が友達になってあげようと甘い言葉でささやきます。

皇后のいいなりになってしまった皇帝に姑ゾフィーは危機感をもち、

皇帝に高級娼婦をあてがいます。

夫の裏切りに苦悩するシシィでしたが、むしろこれで自由になれると流浪の旅を加速させます。

息子ルドルフは青年に成長。

母譲りの自由主義者に育ちました。

帝国の伝統をかたくなに守ろうとする父とことあるごとに対立し、精神を病みます。

母に助けを求めますが、宮廷との繋がりを断ち切っていたシシィはこれを拒否。

絶望したルドルフは、「死」の接吻を受け入れ、拳銃自殺します。

シシィは自分に生き写しだった息子ルドルフへの深い哀悼の念に苦しみます。

「死」を受け入れようとしますが、それは逃避であって愛ではないと今度は「死」の方から拒否されます。

その後、相次いで訪れる、家族、友人の死。

そして最後に「死」はルケーニに凶器を手渡します。

スイス、レマン湖のほとり。

旅行中のエリザベートをルケーニが襲い、胸を一突きします。

闇の中明るい光に目覚めると、

シシィはすべての苦しみから解き放たれた姿で現れます。

そしてようやく「死」を受け入れるのでした。

ミュージカル『エリザベート』の魅力

『エリザベート』は美貌の皇妃エリザベートの人生を美しい音楽でつむぎます。

複雑な心情、政治的な軋轢、そして愛と自由への渇望を描いた感動的なミュージカルは、彼女の人生のさまざまな側面が、劇中の美しい音楽と共に見事に表現され、観客を引き込みます。

「死」という抽象的な概念を登場させることで、単なる伝記にとどまらず、彼女を心から愛する存在があったという、愛の物語へと変容させました。

耽美で退廃的で、滅びゆくものへのあこがれに溢れたミュージカルです。

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この記事を書いた人

つきねこ(絹川詩乃)
ミュージカルの観劇をきっかけに皇妃エリザベートに沼る。
ドイツ語、ドイツ文学、宗教学を専攻。
オーストリアに留学。
執筆:『ミュージカルエリザベート全楽曲解説』『皇妃エリザベート~ハプスブルクの華~』

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